双極性Ⅱ型の呟きの行く先

双極性障害Ⅱ型の元早稲田生。何をこなすのも下手。

某企業の説明会を終えると、その疲労感はもはや痛みと化していた。
スーツという鋳型は、ここまで体を締めあげられるものか、と改めて感じる。


緊張を和らげるために、適当なカフェを見つけて入る。


ブリキのマグカップに入ったアイスコーヒーは、
底の見えない井戸のように見える。
手を付けずに手元のマグカップを眺めていると、店員がストローを持ってきてくれた。


お前はマジョリティから漏れた人間だ。
これからもマジョリティから漏れる人間だ。


企業の説明会に殺到する就活生の黒い群れに溶け込もうとすると、
私の頭の中でこうした声が響いた。


何も価値を作り出せなかった自分が、顔も名前も知らない黒い群れに溶け込もうとする。


本来であれば群れに溶け込むことは、社会的生物である人間にとって、
安心感を覚えることなのかもしれない。


しかし私が常に覚えるのは、弾力性の強さ。
それも私を通してくれない、
水と油のようにお互いを弾く関係性。


自分には、社会に貢献の出来る価値がないと分かっている。
これは、憂鬱な自分が作り出した、歪んだ認知ではない。
適正の方向性が社会に向いていない、という感覚が近い。


だから、マジョリティに漏れた就職活動をしようと決めた。


職を得るのに、黒い渦の勢いに身を任せるだけが唯一の道ではないはずだ。


とりあえず、で職を得るのをやめた。
自分の及ばない事で価値を生み出そうとするのをやめた。


私は恐らく、またもスタートラインに立つのにすら遅れるのだろう。
しかし、それでいい。
自分の命を削って生み出す、まやかしの価値は、すぐに見破られてしまうだろう。


しかし、飲み終わったコーヒーは、氷が大きくて、やはり底が見えなかった。