憩い
桜はあっという間に散り、緑の鮮やかな葉だけが生命力たくましく残った。
大学の灰皿スタンドまで枝を伸ばし花をつけていた桜の木も、今では枝の先まで葉がびっしりと生えている。
私の大学にはいくつかの喫煙所があるが、この場所が私の居心地の良い居場所となったのは、つい最近のことである。
授業の合間に一服すると、よく友人と遭遇するこの場所は、ある種憩いの場と化していた。
その心地良さから、針金が剥き出しになっているフェンスを背に、石段に座りながら本を読むようになったのも、最近では日常となっていた。
大学に入ってから、友人に恵まれたのは明らかだった。
今までは孤独の寂しさを知らなかったのか、あるいは麻痺していたのかは知る由もないが、孤独が痛いと感じるようになったのも、大学に入ってからの事であった。
個性の強い人たち。そして、それぞれに頭の良さがある。
私は彼女たちを尊敬している。彼女たちと言葉を交わすのは、私にとっては大切にしたい時間だ。
だから、私はあの喫煙所すらも愛おしい。
灰皿スタンドがあるのにも関わらず、吸い殻が数々落ちている事も、
何故か貝殻や流木が横たわっているあの土の山も、
砂利の入った麻袋が積み上げられている光景も、
そして、針金が剥き出して錆が見えるあのフェンスも、
私にとっては全てが愛おしいのである。