双極性Ⅱ型の呟きの行く先

双極性障害Ⅱ型の元早稲田生。何をこなすのも下手。

肉※閲覧注意

私の目の前には二つの袋がある。

猪と鹿の死体が入ったビニール袋。
それも何重にもビニールテープで巻かれていて固定されている。
袋の角には赤黒い血が溜まり、内側には水滴が張り付いている。

生きていたものの最後のなれの果て。
それまで生きていたことの証がビニール袋を見るにつれて想像させられる。

荷台に乗せる際には、もう冷え切った死体であるのに、
生温かさの錯覚が脳を支配する。
足の輪郭、毛皮の硬さ。
生が留められた形と死の触感。


穴を掘る。


まるで殺人の隠蔽をするかのような罪悪感と対峙するが、
これが人間であれば、この程度の罪悪感で済まないだろう、
と恐ろしい想像をする。

しかし現実、
この大きさの猪と鹿であれば10歳程度の人間と重さは変わらないのだろうと、
猟奇的な考えは止んでくれない。


穴を掘る。


何とも名の分からない植物は、こんな深くまで根を張るものなのかと驚く。
ムカデが掘り出される。土の色の変わり目が見える。

獣たちに適当な大きさの穴を掘ったところでナイフを取り出した。

およそこの国の日常では馴染みのない、
銀色の、錆一つないスラリとしたサバイバルナイフ。

ビニールを破る。
この程度の大きさのナイフでは何度も切り込みを入れなくては。
ビニールの葛が空中に舞う。徐々に蠅が集る。

破られたビニールから出てきた猪は、
生きていた時の姿とほぼ変わらぬ姿であった。
唯一違うのは、腹から臓物があふれ出していた事である。


あの黒い臓物は何かしら、等考えている内に腐敗臭が空気中に広がった。


マスクを通しても鼻に届く臭いに一瞬吐き気を催す。
ナイフの傷で腸が破れたのだと感づく。
それでも銀色のナイフを猪の腹を刺す。何度も、何度も。

臭いは消えない。蠅が本格的に集りだす。耳が蠅の羽音を捉える。

死の処理をした後、猪の死体に土を被せる。
臭いを物理でもって隠すかのように。

次には鹿を埋めなくては。そうして私は再び穴を掘った。

鹿の腐敗臭はそこまで空に広がらなかった。
破ったビニールから出てきたのは千切れた頭と胴体。

火かき棒で頭をひっくり返すと、また土を被せた。

さよなら、猪と鹿。
お前たちは時間をかけて、バクテリア、ウジに食われ骨になるだろう。
そして土の栄養となり、植物の糧となるだろう。

破れたビニールの角には依然と黒くなった血がたまっていた。