愛
痛い。
左手の傷を見る度に、
馬鹿なことをした、と後悔する。
きっかけは愛をめぐる、病的な認知と行動。
ただそれだけであった。
人を愛し、人に愛され、
愛し合う関係になればなるほど、
何故距離が遠くなり、痛みが伴うのだろう。
思いやるが故にすれ違う現実のギャップ。
私はその埋め方を知らない。
傷だらけの体と心になっても、
ひたすら愛への信仰を忘れない。
自分を犠牲にした愛。
それは盲目、愚直と言えるのかもしれない。
愛は如何程にも素晴らしい、得難いものだと刷り込まれてきた。
そして悟った。
想像の内に存在しているからこそ、
愛は輝いているのだと。
私にとって愛は奢侈品。
それも手が届くことはない。
鞄や服とは違い、金で買える事もない。
尊くて、時々清純の影に見える汚い俗らしさ。
或いは、
禁断の果実とも喩えることが出来るかもしれない。
覚えてしまったが故に、忘れられなくなってしまったもの。
得てしまったが故に、手放せなくなったもの。
愛で溺れ死ぬこと、すら望んでいるのかもしれない。
しかし、現実は空回り。
自分の身体に残ったのは生傷だけである。
愛されたいなら、愛しなさい。
という言葉を聞いた事がある。
盲目になっている私の視界には、
本当に愛する人がいるのか、はたまた自分だけがいるのか。
私が本当に愛しているものは、何なのだろうか。