欲
人間の欲は底無しだ。
欲しくなって、得て、欲しくなる。
この無限ループと言っても良い。
私は欲しい。
自分が得ることの出来なかった過去の遺産。
得られないと諦めていた未来の至宝。
欲は目を眩ませる。
私の願いは願えば願う程、
いや、願ってしまった時点で叶わない。
それでも、人間の性分が顔を出す。
その醜さに対し罪を感じる自分も。
小さな幸せの連続が、私の生を繋いでいる。
それだけで私には十分過ぎた事。
沼地と化しつつあった池で、水を求めもがいていたあの頃。当時と比べれば十分幸せではないか。
言い聞かせる自分、時々反抗する自分。
板挟みで苛まれる自分。
幸せであるが故に苦しい。
幸福と苦痛とはその実、表裏一体なのかもしれない。
傷口は表面上閉じていく。
それと同時に皮の奥深くまで傷の根を下ろす。
心まで、心臓まで届かなければそれで良い。
春のような日差しが、
コートの、服の下の肌に突き刺すようであった。